恋人とのつらい日々

彼女とは四つも年が離れておりましたから、年上の私が大人になって彼女を引っ張っていかなければならないのですが、あのころの私はまだまだ子供でして。いつも彼女を不安がらせていたんでしょうね。初めてのデートは五月の連休でした。池袋の街をブラブラしまして、映画を観た。ジブリ作品の『となりのトトロ』でした。それから居酒屋へ行き、二人で飲む。これがまた楽しいんです。まあ、誕生したてのカップルでしたから、なにをしてても楽しいのですがね。

ほろ酔い気分で彼女を家まで送る。それが私たちのデートの日課でございました。決まりきった予定でございまさたが、それでも十分に楽しかった。私は彼女のことだけしか考えていませんでした。仕事中も家に帰ってからも、頭に浮かぶのは彼女のことだけです。もう、毎日が幸せでした。しかし、そんな私に一つの試練が訪れたんです。それはその年の六月に埼玉県新座市というところに新店舗がオープンすることになり、私はそこへ責任者として配属されることになったのでございます。お偉方の期待のホープというところでしょうか。これは社会人にとっては誠に嬉しいことですね。こんな力のない自分に期待してくれるのですから。しかし、そのときの私は、この移動を手放しで喜べなかったんです。それと言いますのも、新店舗へ行けば、それまでのように毎日彼女の顔を見ることはできなくなります。私の心は複雑でした。

しかし、彼女と会えなくなるから移動はイヤですとはとても言えず、心を削られる思いで、新店舗へ配属されるその日を待っておりました。彼女も日に日に暗い表情になっていきます。そして、移動の前日、私はお店の連中に送別会を開いてもらうのでした。送別会が終了し、私はいつものように彼女を家まで送る。「それじゃ、行ってくるから」と言えば、彼女は泣いていたようです。私は何と言っていいのか分からず、そのまま振り返らずにその場を去りました。

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