恋愛に必死になる前に

新店舗に配属されてからというもの、彼女に会える日は月に一度、しかもまったく会えない月もありまして、私たちは電話だけが唯一のつながりとなりました。加えまして、当時は今みたいに携帯電話など普及しておりませんから、通信手段は公衆電話のみというわけでございます。それでも私は一日一回は彼女に電話をかけた。長々と話してましたっけ。そんな状況が四年も続いたのはまさに奇跡でしたね。そう、私たちの間はちょうど四年目に自然消滅したのでございます。

彼女はお店を辞め、高校時代の親友が働く自動車会社に転職。そして私も二年後には自分の本当にやりたいことにチャレンジしようと思い、お店を辞めました。スーパーマーケットの仕事を辞めても、私たちはなかなか会える機会がなく、いつの間にか彼女は職場の男性に心が傾いていたようであります。私にしても、彼女とキッパリと別れたわけではありませんでしたが、他に大切な女性ができていた。その彼女は小中学校の同級生でございまして、いつからか私のアパートに転がり込んでいたのです。私が罪の深さを感じたのは、他の女性とほとんど同棲状態の身でありながら、秋にそれまでつき合っていた彼女と軽井沢のペンションで一泊したことです。

今でも自分が許せないんです。唯一の救いは、ペンションに一泊したと言いましても、私たち二人だけで宿泊したのではなく、実は彼女のお姉さん夫婦といっしょだったということでございます。このペンションは数ヶ月も前から予約していたものでしたので、ドタキャンはできなかったのです。しかし、もうこの時期には私たちの間は、お互い寒いくらいに冷め切っておりましたから、早く帰りたいという気持ちだけが私の心を占めてたんですね。軽井沢からの帰り、いつものように彼女を家まで送ることもなく、最寄り駅手前で別れました。電車から降りた彼女の顔は、心なしか悲しそうでした。そしてそれが、私が彼女を見た最後でございました。

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